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2010-08-19 Thu 22:22
少しだけ話をさせてください。

楽園と呼ばれる場所にわたしはいました。
【知恵の実】。
それがわたしの最初の名前でした。
わたしは誰かに食べてもらいたかった。鳥でも、虫でも、わたしを味わって欲しかった。
だけど、わたしを作った主はそれを許してくれませんでした。
箱庭に閉じ込められているわたしを助けてくれたのは一匹の蛇でした。
蛇は呼び止めた女性にわたしの素晴らしさを説いていました。少し恥ずかしかったけど嬉しかった。
女性はわたしを手に取り、口にしました。
最初は驚いた顔をしていましたが、次第に笑顔になり夢中でわたしを食べました。

すぐに、女性は楽園から姿を消しました。
主はわたしを口にしたせいだと言い、蛇は人が愚かなせいだと言いました。
わたしが美味しくなかったから?わたしなんて見たくなくて姿を消したの?もっと甘ければいいの?もっと紅ければいいの?もっと・・・もっと・・・

もう一度あの女性に食べてもらいたい。そう願いながら長い月日が流れました。
楽園は姿を変え、人が増え、家が建ち、わたしはまた実を付け【リンゴ】と呼ばれるようになりました。
あの女性はまだ現れないけど、待っていれば会えると信じていました。

ある日わたしを手にしたのは黒いフードをかぶった老婆でした。
老婆は森に入り、そこにいた女性にわたしを勧めました。女性は楽園のあの人のように美しい方でした。
わたしを受け取り美味しそうと言ってくれました。

わたしはこの人に食べてもらえるんだ。心の底から嬉しかった。
その時、老婆が蛇に見えました。古い記憶がよみがえり心がざわめきました。
「あの時とは違う」と自分に言い聞かせ、嫌な予感をぬぐいました。

でも、予感は現実となったのです―
最後に見たのは、わたしを口にした女性が倒れ、その周りを7人の小人が心配そうに見守る姿でした。

今、木漏れ日も当たらない木陰で、少しづつ土に返るわたしは夢を見ています。

上手に調理されて、
美味しく食べてもらえて、
食べた人の笑顔が見られたら
それはとても素敵なこと―

紅く輝いていた頃のわたしの夢。
ささやかで、とても幸せで。

何がわたしを変えたのか。
泥にまみれてしまった。醜く汚れてしまった。
鳥も、虫も、人も。もうわたしに見向きをもしない。
わたしに笑顔を向けてくれる人はいなくなりました。
それならば最後に何かを願いたい。
わたしのせいで倒れてしまった女性に何か。

そうね。

「いつか素敵な王子様とともに・・・・・・」
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別窓 | お伽話
『暴力』
2010-08-12 Thu 12:45
原作:「桃太郎」/作者、成り立ち不明
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「よう。どうだった?」
「全然ダメ。そっちは?」
「同じようなもんさ」
「どこに言っても言われることは一緒」

「「鬼、お断り!」」

「だよな・・・はぁ・・・」
「桃太郎が来てから収入激減したもんな」
「貯金も根こそぎ持ってかれ、正月越せるか分からねえよ」
「うちなんて明日の米も危ねえさ」
「大体、荷車いっぱいの財宝って言ってもどれだけ鬼がいると思ってるんだよな?」
「一匹辺りで割れば、ちょっと家族と外食して飛んじまうわ」
「そう言えば、角一本の青鬼のこと聞いたか?」
「桃太郎に最初に切られた?傷の治りが悪くて自宅療養中って」
「二日前に死んだよ・・・」
「・・・そうか、ダメだったか」
「葬儀は身内だけでって言ってたからさ、落ち着いたら一緒に」
「ああ、線香上げにいこう」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・明日、仕事どこ?」
「一応、都の方でもらった」
「いいじゃねぇか、都なら。そう悪くない金もらえるんだろ?」
「陰陽師絡みなんだよ」
「またあれか?適当な呪い紡いでる前で苦しんでる振りするっていう」
「それ」
「いくらで受けた?」
「五文」
「三文まで減らされるな。演技指導代だの何だのって足元みやがって」
「そっちは?」
「明日は夜間だ」
「百鬼夜行の数合わせ?」
「いや、羅生門に逃げ込んだ人間を驚かせろってさ。給金は歩合制」
「それ、誰が得するんだ?」
「さあな。人間の考えてることは分かんね」
「緑鬼のとこで一杯ひっかけるか」
「もう店開いてたのか?左足無くしたって聞いたぞ」
「車イスで動いてたよ。入院費稼がなくちゃって言ってな。ほら、かみさんが」
「ああ。犬に・・・」
「可哀想にな。まだ新婚だったのに」
「来週また来るってよ、桃太郎」
「昨日来たばかりじゃねえか?」
「村の活性化に追加の上納金が必要ってお達しだ。どうせ宴会費だろ」
「ちくしょう、こんな頻繁に搾られたんじゃ干からびちまう」
「人間は好きなんだろ、『生かさず殺さず』ってのが」
「人間の方がよっぽど鬼じゃねえか・・・・・・」
別窓 | お伽話
『代償』
2010-08-11 Wed 12:27
原作:「赤ずきん」/ペロー童話集、グリム童話
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こんな惨い殺され方をするほど(生きたまま腹を割かれた)
俺の犯した罪は(割いた腹の中に石を詰められた)
許されざるものなのか(溺死するよう川に投げ捨てられた)

俺は赤い頭巾をかぶった娘と婆さんを食った。
まずは婆さんが寝ているところを一飲みし、やって来た娘を騙してはまた一飲みで欲を満たした。
現れた猟師が二人を助ける為に取った行動も理解できる。俺が猟師の立場ならきっと同じことをしただろう。

十年以上、森の中でとぐろ巻いていれば弱肉強食ってものが嫌でも身についた。強ければ獲物を狩り、弱ければ命を刈られる。時には屍肉を拾って生き繋いだ。
今回、娘と婆さんは俺より弱者だった。猟師は俺より強者だった。
二人を助けた後、頭を銃でぶち抜かれても――納得はできないが――それは仕方が無いこと。
それだけのことだ。

なのに、なぜ俺はこんな形で死なないといけない?
割かれた腹の激痛が気絶を許さない。
石の重さが水底を近づける。
乱暴に縫われた隙間から水が臓物を犯す。

呼吸の仕方が分からない。
空気はどこだ。
助けてくれ、助けてくれ・・・

一思いに殺してくれればよかった。
誰に気付かれなくてもいい。
安らぎなんて望まなかった。
気付いたら死んでいた。それで十分だ。

地獄がもしあるのなら、この世こそ地獄だったんだ。
人間は悪魔だ。自分たちこそ正義だと思いこんでいる悪魔だ。
こんなに酷いことを思いつくなんて、そうとしか思えない。

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
(苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい)

死ぬ。俺は死ぬ。
生まれ育った森の木々に囲まれること無く。森になること無く。
冷たい水の底で殺される。ふやけた肉は魚の餌だ。

あの人間どもはこれからも生きる。
俺を殺したことも思い出話の一つに埋もれるのだろう。
温かい日差しの下で命を奪った話を。やさしい声で読み伝える。
滑稽で、なんて人間らしい事か。

そうか。
ならば一つだけあの人間たちに感謝しなくちゃな。

「オオカミとして殺してくれたこと」

生まれ変わっても人間にだけはなりたくない・・・・・・
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『後悔』
2010-08-09 Mon 22:02
原作:「アリとキリギリス」/イソップ寓話
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しんしんと降り積もる雪。
敷き詰められた純白のカーペットに異色が混じっている。

【キリギリス】だ。

静寂の中でわずかに聞こえてくる呼吸音。今にも消え入りそうなほど弱々しい。
【キリギリス】はもうすぐ死を迎える。
冬支度をせず、夏も秋も遊んだ代償は命で支払うことになった。
生と死を天秤にかけ、恥を忍んで【アリ】に食料を分けてもらおうともした。しかし、コケにされ続けた【アリ】が手を差し伸べるはずも無く、【キリギリス】は一片の木の葉ももらえなかった。

「何を、していたんだろう・・・?」

明白な死を目前に、答えの無い自問を繰り返す。
もう寒さや痛みを感じていない。跳躍に特化した後ろ足も凍傷で根本から腐り落ちている。

「ひっ、ごめん・・・なさい・・・ごめ、んな・・・さい。ご・・・めんなさ・・・い・・・ごめん・・・」

出てきたのは謝罪の言葉。
【キリギリス】は泣いた。涙は流れていない。もう涙分の水分も有していなかった。
誰に対して、何に対しての贖罪か【キリギリス】にも分からない。
謝りたかった。それで少しだけ何かに許されたかった。

「も・・・一・・・け、せ・・・」

言葉を発する力も奪われる。
聞こえるのは自分の浅い呼吸と、小さくなる心音。
【キリギリス】は僅かな時間と引き換えに、この世界を目に焼き付けようとした。
ゆっくりと開かれる目。"多くの一つ"を映してきた複眼。
鉛色の空と、そこから舞い散る白銀のぼたん雪を見て、世界から見放されようと思った。

でも、開かれた視界は闇一色だった。
瞳に光が灯ることはもう無い。

呼吸がさらに浅くなる。感覚を失っている体が強張る。
ゆっくりと。息を吐く。
ため息に似ている。

「      」


―――止まった。


最後の望みすら叶わなかった【キリギリス】。
悔しかっただろうか?
悲しかっただろうか?

でも【キリギリス】の最後の言葉。【キリギリス】自身にも聞こえない言葉。
証明するものは何も無いけど、多分・・・きっと、やさしい言葉だ。
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